賢明女子学院中学校・高等学校

光あれ 日々の所感 校長 松浦明生光あれ 日々の所感 校長 松浦明生

2018/05/07

バッタを倒しにアフリカへ

お早うございます。長い連休でしたが、有意義に過ごせたでしょうか。新学期が始まって疲れがたまっていた生徒には疲れを取る良い機会だったと思います。5月は新緑のきれいな月だし、聖母月でもあります。気分を新たにがんばっていきましょう。

さて、今日はひとの趣味・興味についての話をしたいと思います。ひとの趣味はそれぞれで、昨年面談をした生徒の中にはイモリを飼っている生徒がいました。私はイモリとかヤモリといった生き物は大嫌いなのでそのような生き物を好き好んで飼う人の気持ちがわからず、「窓にくっついているヤモリのお腹がつるつるで白いのを見ると気持ちが悪くて仕方がない」と言うと、その生徒は「それがかわいいんです!」とニコニコして答えるのです。「エーッ!そうなのか、私なんか自慢じゃないけれどヤモリとイモリの区別さえ分からない」と言うと、「ヤモリは爬虫類でイモリは両生類です」と間髪をいれずに返事が返ってきました。そのときの生徒のうれしそうな表情を見て、私はひとの趣味は本当にそれぞれだと思ったものでした。

これは賢明とは関係がありませんが、バッタが大好きだという人がいます。前野浩太郎さんという人で、彼は小学生のころどんくさかったらしくて、鬼ごっこをすると必ずつかまってしまう、いったん鬼になるとどんくさいものだから誰にもタッチできず、永遠に鬼をやるハメになります。浩太郎少年が鬼になるとゲームが成立しないため、心優しき友人たちはあえて浩太郎少年を見逃すようになり、いつしか浩太郎少年は空気のような存在になっていきます。そっと戦線離脱し、道端に座り込む、友だちと満足に遊べない情けなさでうつむいていた浩太郎少年の目に止まったのが、昆虫でした。暇を持て余しているから、まじまじと見つめるうちに、彼らが疑問の塊であることに気が付きます。なぜそんな動きをしているのか、なぜそんな体の形をしているのか。それで昆虫に興味を持つようになりました。

そのような折に読んだ子供向けの科学雑誌に載っていたことですが、外国でバッタが大発生し、それを面白がって見たがる外国人のために「バッタ見学ツアー」が企画されたそうです。考えてみれば不謹慎なツアーですね。一団は目的通りにバッタの群れを見学することができたのですが、その中に巻き込まれてしまいます。飛び交うバッタがぶつかってくるだけでは済まず、緑色の服を着ていた女性は無残にも服を食べられてしまったそうです。自業自得かもしれませんが怖い話ですよね。しかし前野少年の反応は違いました。

「自分もバッタに食べられたい!」

その日以来、緑色の服を着てバッタの群れに飛び込むのが前野少年の夢となりました。

夢はさておき、前野君は昆虫を研究するために、昆虫博士として知られている教授が弘前大学にいることを調べ、一浪して弘前大学に進学します。そしてバッタを研究することになり、神戸大学の大学院に進み、博士号まで取得するのですが、マイナーなバッタの研究では日本ではとても就職できません。悩んだ末、研究室での研究ではなくバッタの大発生で農作物に多大な被害が出て苦しんでいるアフリカに行けばバッタをじっくり実地研究できる、そしてその延長上に防除技術を開発できれば何とかなるのではないかと考え、幸い研究費の支援を受けることもできたのでアフリカのモーリタニアへ行くことになりました。

言葉も習慣も何も知らないアフリカでどのような悪戦苦闘をしたかについては、ご本人が『バッタを倒しにアフリカへ』(光文社新書)という本を書いているのでそれを読むと分かりますが、とても面白いです。一つだけ体験談を紹介すると、砂漠でサソリに遭遇します。知っての通りサソリは危険で、刺されると最悪の場合は死んでしまいます。皆に「サソリが出た。注意しろ!」と言うと、「あっスコーピオンね、注意しとくわ」くらいのぬるい反応しか返ってきません。でも結局刺されたのは前野さんの方で、バッタが発生したとき、前野さんはバッタを観察するのに夢中でサソリがいることに気が付かず、サソリを踏んづけてしまい刺されてしまいます。これが危険な毒を持つサソリだったらしく、口で毒を吸い取ることもできず、研究所に戻るのですが、走るとかえって毒の周りが早いらしく、気は焦りながらゆっくり早く戻ると、所長からなぜもっと早く知らせなかった、と叱られてしまいます。で、所長は刺された患部を強くつねってなにやら呪文を唱えると、よしこれで大丈夫だ、でおしまい。「あのう、薬がほしいんですけど……」もう一人のスタッフに診てもらっても、つねって呪文を唱えておしまい。これではだめだと思って日本大使館に連絡すると、さすがに大使館では塗り薬と飲み薬を用意してくれて事なきを得たそうです。

このような面白い話がたくさん紹介されているのですが、話をバッタに戻します。アフリカへ行ったはいいものの、なかなかバッタが大発生してくれないので、アフリカにいても成果が得られず、焦りながらフランスの研究所で研究の手伝いをしたり日本に帰ってきたりしています。そうこうしているうちにモーリタニアの研究所から、バッタの幼虫が大発生した、もうすぐ成虫となるから早く帰ってこいという連絡があり、勇んでモーリタニアに戻ります。そこでようやくバッタの大群に遭遇することになり、駆除活動ができない国立公園内にバッタがとどまっている限りバッタの研究をすることができ、バッタと行動を共にして大量のデータを集めることができました。そうするとバッタの法則性も見えてきます。バッタの特性の研究内容については論文で発表していく関係でこの本には詳しくは書かれていませんが、ご本人は今や観察ノートの学術的価値は5億円を優に超えるだろう、なんて豪語しています。そしてこの時に長年の夢であったバッタに喰われることを実行に移すことにします。さっそうと作業着を脱ぎ捨て日本から持ってきていた緑色のウェットスーツのようなつなぎの服に着替え、飛んでくるバッタに向かって「さあ私を食べるがよい」と両手を大きく広げて、バッタが着地するのを待ちましたが、残念ながら頭から突っ込んでくる特攻バッタが数匹いただけで、あとは完全にスルーされてしまい、長年の夢を叶えることはできませんでした。日本から用意していった全身タイツはまったく無駄になったのですが、でもその位バッタが好きなのだということがよく分かるエピソードですね。

この後、バッタは首都のある方に向かう状況になったのですぐに駆除が必要となり、バッタが国立公園を出たところで駆除作業が行われ前野さんのバッタの実地研究はここまでとなりました。

今朝は昆虫に興味を持った前野浩太郎少年がバッタの研究にのめり込み、アフリカにまで行ってバッタの研究をするようになった顛末を紹介しました。前野さんの書いた本を読んで分かることは、何かに真剣に取り組んでいる人の姿は取り組んでいる分野が何であれとても共感できるし、尊敬に値するものです。そして、何よりもそのような人の書いた記事は「面白い」ということです。書いたものを通してその人の人となりや魅力が伝わってくるからなのでしょう。

程度の差はあっても賢明の生徒にも同じことが言えます。あなた方が勉強やクラブや課外活動などで真剣にがんばっている姿を見るのはとても爽やかでいいものです。本気になって物事に取り組むことによって人は自分の適性を見いだすことができ、またそれらの努力を通して人間的魅力も増していくのではないでしょうか。あなた方が自分の好きなことや興味のあることを手始めに、何事においてもベストを尽くす人間になってくれることを願っています。

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