賢明女子学院中学校・高等学校

光あれ 日々の所感 校長 松浦明生光あれ 日々の所感 校長 松浦明生

2018/05/14

五・一五事件①

おはようございます。

今日は5月14日です。明日の5月15日は歴史的にはどのようなことがあった日か知っていますか。日本史の授業で扱いますから知っている生徒も多いと思いますが、五・一五事件という事件が起こった日です。1932年5月15日、海軍青年将校や陸軍の士官候補生たちが国家改造を画して決起し、時の首相犬養毅(立憲政友会総裁)を襲って殺害した事件です。

当時の日本は、アメリカで起こった経済恐慌の影響で日本でも昭和恐慌(1930)が起こって大不況となり、庶民の生活に大打撃を与えていたころで、指導力を発揮できていない政党内閣に対する不満や、社会不安、経済不安から軍部によるクーデタ未遂事件や右翼による政界・財界の要人を暗殺する事件が頻発していました。対外的には大陸進出をはかる軍部に対する政府の統制がきかなくなりつつあり、1931年には関東軍の一部が南満州鉄道爆破事件を起こしてこれを中国側の仕業として満州(中国東北地方)全土を占領する満州事変を起こしています。中華民国政府はこれを国際連盟に提訴し、国際連盟はリットン調査団の派遣を決定します。これに対し、関東軍は満州占領の既成事実化を図って1932年3月に満州国の建国を宣言させて関東軍が実質支配する満州国を成立させます。

このような中で中国側と妥協点を見いだそうとしていた犬養毅を狙った事件が五・一五事件でした。犬養首相暗殺後は第二、第三の事件が繰り返されることを危惧する空気もあって、この後軍部の意向をある程度組み入れて内閣が成立し、選挙による多数政党が内閣首班に座るという政党政治は崩壊しました。

五・一五事件で決起した将校たちの裁判結果は大きな問題でした。対外的危機感もあって、国民の間で「テロはいけないが、動機の純粋さを認めたい」という減刑嘆願運動が広がります。これは軍部の望むところであり、事件後の軍法会議では、陸軍は禁錮4年、海軍では主犯格ら3人に死刑が求刑されたものの判決では禁錮15~13年になるなど、刑が大幅に軽減されました。さらに数年後、全員が恩赦で釈放されます。一国の首相を暗殺するという反逆行為をおこなっても、「大義があれば赦される」という軍部の若手将校の中に芽生えた甘えは、後にもっと大きな事件を引き起こします。

リットン調査団の報告(1932)で日本の軍事行動は正当防衛とは認められないとされ、これに不満な日本は国際連盟を脱退(1933)し、国際的孤立化への道を進みます。国内では思想統制も強まる中で、下からの直接行動によって天皇親政の形を取った軍部独裁の国家改造を目指す陸軍の若手将校らが決起します。

1936年2月26日、陸軍青年将校が歩兵連隊の一部1400名余りを率いて首相官邸・警視庁・重臣宅を襲撃し、齋藤実(まこと)内大臣、高橋是清蔵相、渡辺錠太郎陸軍教育総監らを殺害し、鈴木貫太郎侍従長に重傷を負わせます(岡田啓介首相は難を逃れました)。

事件は軍部内の対立する派閥と重臣を殺傷されたことに激怒する天皇が連合して反乱部隊の鎮圧に動いた結果、クーデタは終息しますが、首都に戒厳令が敷かれる近代日本史上最大の軍部クーデタでした。主犯格の青年将校ら17人が死刑となり、五・一五事件の甘い判決とは大きな違いとなりました。

しかし軍部の影響を無視することはますます難しくなり、事件後成立した広田弘毅内閣は、陸軍大臣、海軍大臣は現役の武官に限るとした「軍部大臣現役武官制」を復活します。これはどのような意味があるかというと、この制度を利用すれば軍部にとって都合の悪い人物が首相に指名されると、軍部は軍部大臣を送らないという対抗措置が可能になります。そうすると軍部大臣が決まらず、組閣できません。実際これで組閣できなかったケースが出てきます。軍部大臣現役武官制は軍部独裁への道を開いたのです。1913年に軍部大臣を現役から予備役まで拡大することで得たデモクラシーの成果は消し飛んでしまいます。広田内閣はさらに南方への進出、大規模な軍備拡張をめざす「国策の基準」を出し、これがその後の日本の対外方針の基本となります。こうして日本は日中戦争から太平洋戦争への道を歩むことになりました。

今日の話で大事なことを二つ覚えておいてください。一つは、意見の対立はあったとしてもいかなる場合でも暴力はいけないということ。「大義があれば暴力行為も赦される」などということはありません。そしてもう一点、軍隊は合法的に武力を所有している実力組織ですから、だからこそ国民の代表としての行政府、あるいは立法府がしっかり統制しなければいけません。これを「文民統制(シビリアン・コントロール)」といいます。聞いたことがあると思います。

86年前に起こった五・一五事件を思い起こし、暴力による解決はいかなる場合でもいけないということ、「シビリアン・コントロール」が大切であること、この二点を事件の教訓としてしっかり胸に刻んでおいてください。

 

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