賢明女子学院中学校・高等学校

光あれ 日々の所感 校長 松浦明生光あれ 日々の所感 校長 松浦明生

2018/06/04

たーすーけーてー

おはようございます。
昨年、アメリカのフロリダ州のビーチで、沖へ流された一家9人を居合わせた海水浴客ら約80人が安全な浅瀬から沖合に向けて手をつないで100メートル近くの「人間の鎖(ヒューマン・チェーン)」を作り、救助したという出来事がありましたね。人が協力し合えば大きな力となることの見本になるようなとてもいい話でした。
今日紹介する話は数年前の日本の石垣島でのことです。男の人が朝、浜辺を友人と歩いていると、遠くからかすかに高い声が聞こえたような気がしました。遠くで子どもがはしゃいでいるのだろうか、くらいに思ったようですが、しばらくして、もう一度聞こえてきました。今度はなんとか聞き取れました。「たー、すー、けー、てー」。沖の方を見ると、200メートルほど先に黒い点が4つ並んで浮かんでいました。大変だ、ひとの頭だ。男の人は友人に通報を頼み、自分は声の方向に手を振りました。
 救助された4人の女性は大阪からリゾートバイトで石垣島に来ていた仲良し4人組で、そろって休みが取れたので前日の夕方、海に入りサンゴ礁の切れ目付近で遊んでいたときに、リーフカレントというらしいのですが、満潮を過ぎた時刻に寄せていた海水がいっきにはきだされて流れにのまれてしまいました。4人は、離れたら助からないと思って無数に浮いていた発泡スチロールの板切れに腹をのせ、4人横一列で腕を組みました。月も星もない夜になり、遠く民宿の明かりが点々とともっていて、その間隔が狭まると岸から遠ざかっている証拠なのでばた足で流されないようにしたそうです。そのような状態で16時間漂流していて、あたりがぼんやり明るくなって、やっと人影が見えたので、せーの、でできる限り高い声で助けを求め、おそらく声が風に乗って岸辺まで届いたのかもしれませんが、こうして無事救助されました。(朝日2012.2.21)
 よく16時間もがんばり続けられたと思います。これが一人だったらどうなっていたでしょうか。気力が続かなかったでしょう。4人いたからこそ励まし合ってがんばれたのだと思います。一緒にがんばる仲間がいると、1+1=2ではなく、3になるぐらいの力を発揮することができるのだと思います。
 もう一つ、別の話をします。経済学者の松井彰彦さんの小学校時代のことです。松井さんは転校まもない小学3年の春、教室でクラスメートに、うろ覚えですが幼いころ過ごしたアメリカでの話をしたらしいのです。そうすると、自分たちとは違う世界の話だからでしょう、「うそだろー」。ガキ大将格の男子が叫ぶと、あっという間に周りを囲まれて自分を責めたてるムードができあがってしまいました。はっきりした自分の考えを持っていない場合、付和雷同的にリーダー格の人間の言うことに同調する空気が生まれることは、残念ながらあり得ることですね。このとき、石垣島の4人とは逆のマイナスのパワーが働き、ただでさえ多人数のところをさらに増幅されて松井少年に襲いかかってきました。松井少年の顔は引きつりました。しかしそのとき、一人の同級生が皆の前に立ちはだかるようにして言ったそうです。「松井君は、うそつきじゃないよ!」。そうすると、悪口を言っていた子らの熱がさーっと引いたのが分かったそうです。そして松井少年を責める声は急速にしぼんで、なくなってしまいました。一人が弱者の側に立って援護してくれたことで付和雷同的におこった非難の声は消えてしまったのです。松井彰彦さんは、このときの経験が自己形成の上で大きかったと思うと言っておられます。市場と人間のかかわりを分析する経済学の王道から、人間の関係性を科学するゲーム理論の研究へ進み、マイノリティに共感し、差別や偏見の問題に関心を寄せて、障害と経済がテーマの一つになったそうです。(朝日 2017.6.8夕)
紹介した2つの話は私たちに何を教えてくれるでしょうか。
石垣島で漂流した4人の話は、ともにがんばる仲間とつながっていることの大事さや協力することの大切さを教えてくれます。一方、一人の同級生の行動がクラスの空気を変え、孤立せずに済んだ松井彰彦さんの話は、しっかりと意見表明してくれる信頼できる人間が一人でもいてくれれば、たとえ弱者であろうといじめられることもなく自立できるということを教えてくれます。
どちらの場合においても、他の人の協力や助けがとても大きな力になるという点で共通していますね。人間は一人だとくじけてしまうこともありますが、他の人の協力や助けがあればがんばることができるのです。
あなた方も仲間と協力し合って持てる力を発揮させてください。そしてまた、くじけそうな人がいたら、「松井君は、うそつきじゃないよ!」のように、その人に手を差し伸べることのできる人間になってほしいと願っています。

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