現在のお仕事について教えてください。
イラストレーターです。書籍をはじめ、カレンダーやポスターなどにイラストを描いています。絵本のお仕事ですと、アンデルセンなどの既成のお話に絵をつける場合と、絵本作家として自分でオリジナルのストーリーを作って絵を描く場合が、だいたい半々ぐらいです。
なぜ、このお仕事に就くようになったのですか?
賢明で学んでいた頃、当時の私たちの美術の先生で、日本を代表する画家でもいらっしゃった飯田勇先生といろんなお話をさせてもらった記憶がありますね。でも、私は演劇が好きだったので美術部ではなく、演劇部に入ったんです。部活で舞台背景の木を描いたりしていて、それが部員や先生方に褒められていました。あるとき、部員が少ないから部員募集のポスターを作ることになって、私のイラストをつけたポスターを作り学校の廊下に貼りました。そうしたら、そのポスターが人気になって、どっと部員が集まったんです。うれしかったですね。目的を持って絵を描き、私の絵が役立ち、次につながるおもしろさに初めて触れたのがこの出来事でした。
その後は、どのように絵の道へ進まれたのですか?
美術を学び、社会に出て、広告代理店やデザイン事務所で働きました。本格的に絵の仕事をするようになったのは20代の半ばくらいからでした。イラストレーターは世の中の仕組みがわかっていないとできない仕事です。つまり、仕事には目的があって、それに叶うものを作る必要があります。また仕事は、自分だけで完結するわけではありません。自分が作ったものを受けて、次の人が仕事をするんです。自分が最高のものを作らないと、良いものが次へつながらないんですね。
絵の仕事をする喜びとは、どんなことですか?
私がお会いしたことのない多くの人々に、自分の絵を愛していただけることです。幸せな仕事だと思います。絵は私の手を離れると、何千枚もの印刷物になって旅をするんです。小さい子どものための仕事を多くしていますので、展覧会の会場などで大学生くらいの方から「小さい頃からファンでした」と言われることがあります。子どもの頃に見た絵の記憶をずっと大事にして、そうやって声をかけてくれることが本当にうれしいですね。
作品を通して伝えたいのは、どのようなことでしょうか?
愛と夢と希望です。悲しんでいる人に、ちょっとだけ悲しみを忘れてもらいたい。涙を流す人に、ちょっとだけ笑顔を取り戻してほしい。ずっとその人を支えていく力はないかもしれないけど、そんな絵が描けたらいいなと思います。
愛と夢と希望。そのルーツはどこにあるんでしょうか?
全部、母校・賢明で学んだことです。賢明の教育の素晴らしいところは、学問だけではなく、愛と夢と希望を信じて生きていく力を教えてくださること。成績は良いに越したことはありませんが、東大や京大へ行っても、まだまだ人生は長いです。大きな困難に直面したときに何が支えになるかというと、その困難を自分の中でどう解釈するか、そして、今自分を覆う困難の向こうには必ず何かがあると信じる力です。宗教を通して、生きていく上で必要な哲学を学んだのは大きかったですね。
これからの目標はなんですか?
「これがベストか?」と自分に問いかけることを止めないで、仕事をすることです。どんな年齢になっても、そのときの自分のベストをめざすのです。今ベストを尽くしていれば、必ず未来へとつながります。ベストを尽くしている自分が、未来を支えるのだと思います。