賢明女子学院中学校・高等学校

光あれ 日々の所感 校長 松浦明生光あれ 日々の所感 校長 松浦明生

2021/06/07

余韻のある日本の挨拶言葉

おはようございます。
4月の全校朝礼で話をしたように、今年度の年間目標は「挨拶と礼儀・マナーをしっかりしよう」というものです。ほとんどの生徒の皆さんがよくやってくれているので喜んでいます。修道院にお住いのシスターにも大手前公園で会った時にきちんと挨拶をしてくれているそうで、シスター方も喜んでくださっています。それはそれでうれしいことですが、一方でまだ挨拶のできていない生徒もいるようです。2年目の年間目標になるので、今年こそは全員がきちんと挨拶ができるよう習慣づけてください。
そこで今日は、日本語の挨拶言葉が本来持っている意味を考えることで挨拶の大切さを意識しもらうことと、同時に日本人の感性の豊かさ、細やかさにも気づいてもらおうと考え、再度「挨拶」をテーマに話をすることにしました。
まず、日本語の挨拶やあるいは応対の言葉について外国の人がどのように感じているか、というところから話を始めることにします。
挨拶ではありませんが、「すみません」という言葉があります。贈り物をもらった時にこたえる感謝の言葉です。これについて、50年近く日本に住んでいるポルトガル文化センター代表のジョゼ・アルバレスさんという方が書いています。来日したころ、贈り物を受け取った日本人が、相手に「すみません」と言うのを聞いて、どうして謝るのかと驚いたそうです。そのとき、日本語を教えてくれていた先生はこう答えたそうです。「いえいえ謝っているのではありません。感謝しているのですが、すぐお返しをしないので、これはまだ終わっていない、済んでいない、だから、済みません、なのです。気持ちがまだおさまらないという意味を込めた言葉なのです」ということでした。そのようなニュアンスを含んだ幽玄に満ちた美しい言葉が日本語なのだと気付いた、と新聞に書かれていました。(「もったいない語辞典」読売新聞2015年6月)
同様に、日本語の「さようなら」に感銘を受けた女性がいました。アン・モローという女性で、大西洋無着陸横断飛行をおこなったチャールズ・リンドバーグ氏の夫人です。夫人は夫とともに来日した時に「さようなら」の意味を教えてもらいました。「左様ならば(そういうことであるならば)、ほんとうは別れたくないけれど、どうしてもそうならなければいけないのならば」という意味を含んだ別れの言葉だと。「これまで、このようにうつくしい言葉をわたしは知らない」とリンドバーグ夫人はご自身の著書に綴ったそうです。著書は日本訪問から4年後に出版されていますが、この間に夫妻は1歳の長男を誘拐されて殺害される不幸に遭っています。“さようなら”の語源に、みずからの心を重ねたのだろう、と毎日新聞の記者は書いています。(「編集手帳」毎日新聞2014年3月14日)「さようなら」は別れたくない自分の気持ちも含んだ余韻のある言葉で、響きもとてもやさしくきれいですね。
ここからはおもにネットで調べたことの紹介になります。
朝の挨拶である「おはよう」の起源はどこにあるのでしょうか。考えてみると、「おはよう」に「ございます」と続けるのは変ですね。これは間に言葉が省略されています。この言葉は戦国時代にまでさかのぼる歌舞伎が起源になっているという説が有力だそうです。歌舞伎役者は準備に時間がかかるので公演が始まるかなり前から芝居小屋に到着して準備をします。その時に裏方さんが役者さんたちに「お早いお着きでございます」と言って出迎えたそうで、これが「おはようございます」に転化していったというのです。相手へのいたわり、思いやりのこもった言葉です。芸能界では、夜会っても「おはようございます」という習慣がありますね。私はこれについてあまりよい印象を持っていなかったのですが、「おはよう」の起源を知ると、芸能界の習慣は実はその根源的な意味に沿ったものだということが分かりました。
「おはよう」以外の挨拶言葉について触れると、「こんにちは」は、「今日は、ご機嫌いかがですか」という体調や相手を気遣う意味の言葉ですし、「ありがとう」は「有り難し」、つまり「めったにない」贈り物、あるいはおこないという意味の言葉で、感謝の意味だけでなくそれを言うきっかけとなった物事に対する喜びの気持ちも含んでいます。
このように、本来の意味を知らないで何気なく使っている挨拶の言葉には、日本人の細やかな感性からくる余韻のある言葉が多いということが分かります。日本語の挨拶の言葉にはこのような味わい深い意味が込められていることを知れば、その意味に沿って気持ちのこもった挨拶をかわすことができるようになるでしょう。賢明創立期のシスターが挨拶をする時は“Stop,Smile,and Bow”(立ち止まり、笑顔でお辞儀をしなさい)と教えられましたが、この“Stop”には、おざなりではない気持ちのこもった挨拶をしなさい、という意味が込められているのです。
なお、挨拶の言葉には日本語だけでなく、各国の言葉にも色々味わい深い意味があります。それぞれ調べてみてください。皆さんがよく使う「バイ、バーイ!」という言葉についても調べてみるとよいでしょう。
最後に、昨年の「PHP作文甲子園」で優秀賞を受賞した赤星夏希さんという高校1年生の作文を紹介して終わりにします。PHPというのは雑誌の名前で、小さな雑誌ですが毎回大変いい内容の記事が載っていて、定期購読しているお家もあるのではないでしょうか。

私を支えてくれた言葉は、「おはよう」です。多くの人は「おはよう」という普通の言葉のいったいなにが良いのか、と思うかもしれません。しかし、この言葉は私にとって、いつも私を救ってくれた特別な言葉です。
私は小さいころから、父の仕事で何度か転校を繰り返してきました。私は初対面の人に話しかけるのが苦手で、学校が替わるたびにクラスの子となかなか友達になることができませんでした。
そんな私を救ってくれたのが「おはよう」と声をかけてくれた隣の席の子でした。
それは私が小学生のときです。進級と同時に私は転校をすることとなりました。
クラスのみんなは新しいメンバーに替わり、喜んだり悲しんだりしていました。そんな中、私に声をかけてくれる人は誰一人いませんでした。
誰とも話さず、ただ学校に来て帰るだけの日々が続きました。隣や後ろの席の子に何度も声をかけようとしました。
しかし、緊張と不安でずっと声をかけられずにいました。学校に行きたくない、そう思う日が何日も続きました。
そんなときでした。隣の子がある日、「おはよう」と声をかけてくれたのです。私は驚く気持ちもあったけれど、それ以上にすごく嬉しかったです。
その言葉がきっかけで、私はその子の友達やクラスのみんなと仲良くなることができました。その子の言葉が私を救ってくれたのです。
それ以来、私にとって「おはよう」という言葉は特別な言葉になりました。何よりも大切で、毎日欠かさず言う言葉になりました。
その後、転校を何度か繰り返しました。やはり私には自分から声をかけることは難しかったです。それでも「おはよう」という言葉だけは言えるようになりました。
私を救ってくれた友達の言葉で、今後は私が友達を救いたいです。
(「PHP No.864」より)

挨拶の持つ力には本当に大きなものがあるのですね。賢明生も負けないようにしっかりと挨拶をしてください。
それでは、今日の話を終わります。

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