賢明女子学院中学校・高等学校

光あれ 日々の所感 校長 松浦明生光あれ 日々の所感 校長 松浦明生

2024/04/09

2024年度中学校入学式

77回生の皆さん、賢明女子学院中学校、ご入学おめでとうございます。

 

柔らかな春が、明日へと続く力強いエネルギーを感じさせてくれるこの頃です。

来賓の皆様、並びに保護者の皆様には、御多忙のなかご出席いただきましたこと、深く感謝申し上げます。

新入生のみなさん。先ほど、ご両親が心を込めて付けられた、あなた方、一人一人の名前が読み上げられるのを聴きながら、「あなた」と「賢明」が固い絆で結ばれたことを大変嬉しく思いました。本校での学校生活で色々なことを学び、感性と知性を磨き、勉強やスポーツ、クラブ活動などを通じて、人として、一人の女性として美しく、豊かに成長して欲しいと願っています。

 

ドイツの作家、ミヒャエル・エンデの名作、「モモ~時間どろぼうと、ぬすまれた時間を人間にとりかえしてくれた女の子のふしぎな物語」を読んだことがあるでしょうか。穏やかで平和な村に、人々から時間を奪って生きる「時間どろぼう」の一味が現れて、村の人達に「時間」の節約を勧めます。

「あなたがたはのんびり暮らしているが、それは大変な浪費である。時間というものは節約して貯蓄するものだ」と教えます。時間を貯蓄銀行に貯めると命が倍になる、という彼らの言葉のせいで、町の人々から「時間」が奪われ始めます。

村の人達の生活は一変します。それまで丁寧に仕事をしていた床屋さんは、時間を切り詰めて仕事がぞんざいになり、ペンキ屋さん、パン屋さんもそれまで心を込めて壁を塗り、パンを焼いていたのに、いい加減に済ませるようになっていきます。そして、みんながだんだんと怒りっぽくなり、落ち着きのない人間になって行くのです。しかし、そのようにして村人たちの節約したはずの時間は、結局彼らの手元には残りませんでした。時間はあっという間に過ぎて、一日が、どんどん短くなっていったのです。なぜならば、節約した時間は「時間どろぼう」の食い物になっていたからです。

村人たちは自分の子供のために費やす時間を惜しんで、高価なおもちゃを買い与えます。子供たちは次々に新しいおもちゃを求め、自分達で工夫することがなくなり、子供らしい想像力を失っていきました。この状況に心を痛めた主人公モモが、時間どろぼうから盗まれた時間を取り戻します。そして、村には再び平和と幸福が戻ってくるというお話です。

 

時間を、ただ節約するだけでは意味がありません。一人の人間としてよりよく生きるためには、心が成長する時間をたっぷり使わねばなりません。大切な人と過ごすために、そしてあなたの心を豊かにするために十分に時間を使うべきです。人と人との繋がりを大切にし、日々の出会いを心から楽しみ、精一杯に今を生きることが、本当の時間の使い方なのです。

「時間の国の王」は言います。

「光を見るために目があり、音を聞くために耳があるのと同じように、人間には、時間というものを感じるために『心』というものがある」と。

また、「人間は、ひとり一人自分の時間を持っている。自分らしく生きた時間だけが、本当の自分の時間なのだ。」と言います。

皆さん、これから、賢明でたくさんの時間を過ごします。新しく始まる学校生活で様々な人やものとの出会いを重ね、あなた方は成長します。今よりもっと忙しくなるかもしれませんね。しかし、全ての行動に自分の『こころ』が生きていなければ、「時間どろぼう」に時間を盗まれてしまいます。よく感じ、『こころ』の動く生活を重ねることによって、あなたの時間は本当の時間になり、愛と希望に満ちた未来が開くのです。

 

さて、一つ考えてみてください。時間の国の王は「光を見るために目があり、音を聞くために耳がある。」と云いましたが、光は目だけで見るものでしょうか、音は耳だけで聴くのでしょうか。そうではありませんね、見ることも聞くことも心を伴わねば、真実に届きません。自分の内面世界、心に映すように光を見、音を聴きましょう。自分の内側の世界と外の世界が一つに結ぶ感覚が大切です。

冒頭に話しましたが、あなたの名前はご両親が心を込めてつけられた、掛け替え無く、尊いものです。あなたは、あなた自身をこの学び舎、賢明女子学院で、大事に育てて下さい。

「The Best」。この言葉は賢明のモットーです。あなた方、ひとり一人が与えられた能力を最大限に発揮して、燈台の光のようにすべての人のこころを照らす、素敵な人になるためには、時間どろぼうに大切な時間を盗まれぬようにしなければなりません。物事を追い続ければ時間はあっと言う間に過ぎてしまいます。追いかけるのではなく、掛け替えなき今を大切に生きることを目指して、今日から一緒に歩んでまいりましょう。

 

最後になりましたが、保護者の皆様、お嬢様のご入学おめでとうございます。心よりお喜び申し上げます。本日より私たち賢明の教職員一同がお嬢様の教育にあたることとなります。6年間の学校生活を通して、大切なお嬢様方が、心豊かな人に成長されることを願い、誠心誠意、努力を続ける所存ですが、保護者の皆さまの深いご理解とご協力がなければ何事も達成できません。皆様と心を合わせて、感性と知性の調和のとれた賢明独自の人づくりの実現を目指します。

 

本日ここにいらっしゃいます、すべての皆様の上に、神様の豊かな祝福がありますようお祈りし、私の式辞とさせていただきます。

2024年4月9日

 

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