2025/03/18
75回生の皆さん、賢明女子学院中学校、ご卒業おめでとうございます。
新しい命が息吹き始めるこの春の良き日に、賢明女子学院中学校の卒業式を迎えることができました。本日は(来賓の皆様、並びに)保護者の皆様には、ご多忙の中、ご臨席賜り、感謝申し上げます。皆さまが、賢明女子学院中学校の教育方針にご理解を頂き、温かなお心で支えてくださったおかげで、無事、今日の日を迎えることが出来ました。中学校義務教育の過程は人生の大きな節目ですので、お慶びもひとしおのことと思います。教職員一同心より感謝いたしております。
あらためて、75回生の皆さん、中学校卒業おめでとうございます。さて、皆さんの中学3年間までを振り返ってみましょう。思い起こせば、小学校の高学年時には、世界を揺るがせたコロナウイルス感染症との戦いが始まり、ウィズコロナと呼ばれるように、マスクでの学校生活となりました。また、皆さんがこの賢明に入学してからは、ウクライナ侵攻、アフガニスタン紛争、シリア内戦、またメキシコの大地震、ハワイ・マウイ島の山火事等、世界中で戦争や災害が勃発し、国内においては、福島県沖地震や昨年の石川県能登半島大地震、大雨による災害、また岩手県の山林火災など、数えきれない程の災害が起こり、多くの大切な命や家族が失われています。これらの事実をしっかりと心に留めて、世界と日本と、私達との関係を考えねばなりません。
皆さんの3年間の学校生活の一方で、生きることの不安を抱えて悲しみ、苦しみの涙を流す人が数多くいらっしゃることを忘れてはなりません。それらの人もみんな、今を共に生き、地球社会を構成する私達の仲間なのです。世界を視野に入れ、他の人のことを思い、日々の生活に照らして、自分自身の見つめる生活を続けて欲しいと願っています。
さて、3年間の学校生活振り返ってみてください。我慢したことや苦しかったことも沢山あったでしょう。しかし、過去に起きてしまったことだから仕方がない、過去はもう変わらないと思わないでください。過去は変わります。あなたが変われば今が変わり、今が変われば、過去も変わるのです。囚われぬ、豊かな心で今を生きれば、過去の失敗や辛かったことのお蔭で今があると解ります。そして過去のことが有難く思え、共に過ごした仲間への感謝の気持ちが生まれます。楽しかったことも苦しかったことも、全てのことが、自己の成長に繋がり、あなたを立派な人に成長させてくれるのです。今をどう生きるかによって、未来が開き、過去も変わるのです。
先月、私は、皆さんと一緒に北海道修学旅行に出かけました。初日の訪問先、ウポポイ、民族共生象徴空間で、アイヌの民族の踊りや歌を観賞し、日本文化の原点とも云える深い心の文化に触れることが出来ました。「ウポポイ」とはアイヌ語で「おおぜいで歌うこと」を意味しているそうです。踊りや歌等、文化や芸術の原点は祈りです。アイヌの文化は一時期、否定されましたが、アイヌの人々は長い間、自分たちの権利を守り、文化を継承するために弛まぬ努力を続けてきました。その結果として、縄文に通じ自然と調和する、アイヌの素晴らしさが解り、世界的にも評価されて、今では多くの人々がアイヌ文化を尊重し、評価するようになっています。しかし、その背後には多くの困難にめげぬ、強い心と、ひたすらな挑戦があったことを、美しい日本に生きる人として忘れてはなりません。アイヌ文化は日本の原点、世界最古の文明縄文に通じます。アイヌの人々のたゆまぬ努力によって、日本は、原点を失わずに済んだのです。
聖書の中のマタイによる福音7章12節に、「だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。これこそ律法と預言者である。」という言葉があります。私たちが互いに尊重し合い、命を大切にする姿勢を示しています。アイヌの人々の努力も、この聖書の教えも、今、地球上に共に生きる人は、みんなが仲間であり、掛け替え無く尊い地球という家に住む家族であることを教えてくれるのです。
今日の良き日、心からの祝福をこめて、先ほどお伝えした聖書の一節を含んだ、マタイ7章の7節から12節を贈りましょう。
『求めなさい。そうすれば、与えられる。
探しなさい。そうすれば、見つかる。
門をたたきなさい。そうすれば、開かれる。
だれでも、求める者は受け、探す者は見つけ、門をたたく者には開かれる。
あなたがたのだれが、パンを欲しがる自分の子供に、石を与えるだろうか。
魚を欲しがるのに、蛇を与えるだろうか。このように、あなたがたは悪いものでありながらも、
自分の子供には良い物を与えることを知っている。まして、あなたがたの天の父は、求める者に
良い物をくださるにちがいない。
だから、人にしてもらいたいと思うことは何でも、あなたがたも人にしなさい。
これこそ律法と予言者である。』
山上の説教と言われる場面で、イエス・キリストが人々の前で語った言葉です。求めれば神様は叶えて下さるという意味ではありません。より良く生きていくためには、今を生きるために、本当に必要なものは何かを判断する力を身につけることが重要であるということです。世界を知り、人を智る(しる)ために、自分の内なる心と対話し、自分とはどのような存在か、自分はどう生きるべきかを考え抜くことが重要なのです。そのために求め続けなさい、探し続けなさいとキリストは仰っているのです。迷わずに一歩を踏み出すことが大切です。まず、求める、探す、扉を叩く、一歩を踏み出しましょう。どんなことでも真剣に追い求め、考え抜けば必ず意味のある出会いを得て、何かと出会い、素晴らしい発見があるでしょう。今をどう生きるかによって未来が決まります。失敗を恐れず、爽やかな心で日々の一歩を踏み出して欲しいと思います。
それでは、今日話したことを心に留めて 4月からの新しいスタートに生かして下さい。中学校を卒業する皆さんの輝かしい未来を祝し、ここにいらっしゃる、すべての方々の上に、神様の豊かな祝福がありますようお祈りして、私の式辞といたします。
2025年3月18日
賢明女子学院中学校長 藤岡佐和子