2023/09/25
学院祭も無事終了し、来週は体育大会ですね。
「人間力を高める」と云う2学期の目標を伝えましたが、行事は、楽しさを追求するばかりではなく「人間力」を高める絶好のチャンスです。ちなみに、「人間力」を辞書で紐解くと『社会を構成し運営するとともに、自立した一人の人間として力強く生きていくための総合的な力』と定義されています。人間力を構成する3つの要素として、知識、論理的思考力、想像力などの「知的能力的要素」と、コミュニケーション力、リーダーシップ、他者を尊重する心などの「社会・対人関係力的要素」、意欲、忍耐力、自己表現力などの「自己制御的要素」の3要素とされています。これらは将来、社会で活躍するために必要とされる力でもあります。皆さんで取り組む行事は、一人一人の能力がどんなに高くても、仲間との協力がなければ成功しません。仲間と心を合わせ、協働し、熱意をもって取り組めば、必ず成功するでしょう。今後の行事もそのような要素を自覚して行動し、成功を導いてください。皆さんの心が一つになり、成功を収めれば、「人間力」が更に高まるのです。
ある機関紙に、哲学者、和辻哲郎(わつじてつろう)のことが書かれていました。皆さんはあまり知らないかも知れまんが、和辻哲郎氏は、日本の哲学者で、西洋の哲学研究から出発して、日本文化史、倫理学・日本倫理思想史に研究業績を残し、学問の世界に大きな影響を及ぼした歴史的な倫理学者です。「人間」は、もともとは「じんかん」と読み、文字の通り、人と人との間、世の中と交わりを通じて、自分の役割を果たしながら、自己を活かすことを意味します。それを間柄的存在と呼び、世の中で自分の「在り方」「生き方」を見出し、それを自己の「生き方」に活かすことが、人と人との間(ま)を生きること、即ち「人間」であると「倫理学」で述べています。
彼は姫路市仁豊野、ふるさと播磨の出身で、砥堀小学校に通っていました。砥堀小学校には、和辻哲郎氏が創作した合成文字「ちから」の石碑があります。砥堀小学校出身の人は知っているかもしれませんね。その文字は、漢字の「力」が三つ重なっているように見えますが、実はひらがなの「ち」と「ら」の字も含まれています。この文字は、和辻哲郎氏が母校を訪れたときに、自分の人生や学問の原点となった仲間との絆を表現したものだと言われています。石碑の横には、和辻哲郎氏の著書「人間学としての哲学」から引用した言葉が刻まれています。
「成長を欲するものは、まず根を確かにおろさなくてはならぬ。上にのびる事をのみ欲するな、まず下に食い入ることを務めよ。」というものです。この言葉の意味は、人間は自分の能力や知識を高めるためには、まず基礎をしっかりと築かなければならず、表面的な知識や技術ではなく、豊かな心を持ち、深い思考や学習の力を身につけることが大切だということです。あなたたちはこの言葉に共感しますか。私は、この言葉は今の時代にも通じると思います。デジタル化の時代には、情報は簡単に手に入りますが、それをどう活用するかは、その人の判断力や行動力にかかっています。そして適切な判断や行動を促すものが、深い思考や高い学力であり、思考や学力を現実に活かすものが、自在な感性と感性に裏付けられた自然で自由な心なのです。
先ず大切なことは、心を開きよく感じる、日々の生活です。その上で、先生と友達、家族と、心を通じ、循環させて、自由な心で学ぶ主体性を持つことです。学校は、そうした力を育む場です。先生方は、あなたたちが良く感じ、よく考え、力を伸ばすために、自らも感性を磨き、豊な心の人を目指し、みんなのことを真剣に考えています。どのように授業を進めれば良いか、一生懸命に考えて教壇立っているのです。
今日は今日しかなく、今はもう帰ってきません。かけがえのない今を精一杯に生きて、充実の日々を過ごしましょう。