2025/05/26
おはようございます。
今年の文化行事は、「音楽」の年です。本年度は、淳心学院の皆さんと一緒に、アクリエ姫路の大ホールで、大阪交響楽団の演奏を聴きます。プログラムの中に、ショパンのピアノ協奏曲(ピアノコンチェルト)があります。ピアノのソロは、本校の卒業生で、現在、相愛大学音楽学部の教授をなさっておられる井上麻紀さんです。賢明の先輩が演奏して下さるなんて、素晴らしいですね。私も大変楽しみにしています。
私は、中学の入学式で「星の王子様」の話をしましたが、その中で「目には見えないけれど大切なもの」について考えて見よう、という話をしたことを覚えているでしょうか。目に見えるものを生み出す、目に見えないものを感じる心が、大切であることを伝えました。音楽鑑賞も現れる音の背景にある、目に見えないもの、心の動きを感じ取ることが大切です。音の背景にある心の歌を聴き、現れる楽音を深く味わいましょう。
さて、芸術鑑賞会にちなんで、今朝は小澤征爾さんのことをお話ししましょう。小澤征爾さんは、「世界のオザワ」と言われた名指揮者で、30年以上、世界中の音楽界をリードし、昨年2024年88才で亡くなられました。長年、ボストン交響楽団の音楽監督やウイーン国立歌劇場の音楽監督を務められた、音楽史に残る名指揮者でした。
以前、新聞に掲載されていた記事です。音楽業界には、アンダー・スタディという仕事があるそうです。どんな仕事かというと、舞台のソリストが、病気やけがで本番に出れなくなった時に、すぐに代役をこなす人のことを言います。急遽、出演するときに備えて、歌や、ミュージカルの場合であれば踊りも含めて、全て練習して覚えておかなければなりません。しかし、殆どが、出番がないまま終わるのです。いつ出番が廻って来るかわからないのですから、精神的に大変な仕事ではないかと思います。けれども、この仕事を根気強く続けて好機を掴み、その後トップスターになった人が数多くいるそうです。
オーケストラの指揮者の世界にもそのような仕事があります。アシスタント指揮者といいます。若き日の小澤征爾さんは、若い時にニューヨーク・フィルハーモニーの指揮者であった、レナード・バーンスタインのアシスタント指揮者でした。バーンスタインってみんな知らないかな。ミュージカル「ウエストサイドストーリー」の作曲者です。
小澤征爾さんは、いつでも、代わりが出来るように、バーンスタインのリハーサルは全て聴くようにしていたそうです。何人かのアシスタント指揮者がいて、それぞれに曲目を分担していたようですが、小澤さんは自分の分のスコアをすべて頭に入れ、その上に、他のアシスタントに託されていた曲もすべて頭の中に叩き込んで、バーンスタインがいつ本番に立てなくなっても、すぐにピンチヒッターとして指揮をすることができるよう、日頃から準備をしていたそうです。
そのような、ひとかたならぬ努力を積み重ねて、その後、彼は「世界のオザワ」と評価される、指揮者となりました。並々ならぬ努力の人だったのですね。
このことを私たちに結び付けてみましょう。誰かが発表しているときに、「私だったら、どう話すかな?」とか「私だったら、どんな話をしようかな?」とか、常に、「自分も関わることになったらどう考えるかな」など、自分に置き換えて聞いてみたらどうでしょう。自分が発表しなくても、発表者の立場になって考えれば、自分の中で色々な発想が生まれます。そして、自分が発表する時にその経験が生きて世界が広がり、より自由な表現ができるでしょう。
何気ない日常の中でも、「もし、自分がその立場だったら」と考えることは、相手のことを理解し、尊重して受け入れることのできる、柔軟な、広い心を育むことにつながると思います。。
今朝は、芸術鑑賞会にちなんで、このようなことを思いめぐらしてみました。
それでは、一日、爽やかに頑張りましょう!私の話を終わります。