2025/09/22
皆さんは、何かお気に入りの音楽はありますか?皆さんも知っているように、私の専門教科は音楽ですので、音楽を聴くことはもちろん大好きです。クラシック音楽に限らず、どのジャンルの音楽も好きなので、お昼休みに流れる音楽も、いつも楽しみにしています。毎朝、通勤の車の中でも音楽を聴いています。最近気に入っているのはクラシック音楽で、ロシア出身のラフマニノフという作曲家の「ピアノコンチェルト第2番」を聴いています。力強く、繊細で、時に激しく、時に優しく、曲想は変化に富んでいます。音楽の中に人生のすべてが詰まっているようにさえ感じることがあります。
ピアノコンチェルトは、ピアノが主に旋律を奏で、オーケストラがそれに合わさる形で展開する音楽形式ですが、主役はピアノだけではありません。オーケストラ一人ひとりの奏者が、それぞれの役割を果たしながら、重なり合って全体の響きを創り上げていきます。弦楽器、管楽器、打楽器、それぞれが異なるリズムやメロディを奏でながら、呼吸を合わせ、響き合い、心を結んで、ひとつの音楽が形成されていくのです。
「響き合い、心を結んで、形創る」。このことは、学校生活にも通じます。私たちの学校も、オーケストラと同じです。生徒の皆さん、教職員も合わせて、全員が一人ひとり、それぞれの音色、命の響きを持っています。明るい響き、静かな響き、時には少し不安定な響きもあるかもしれません。でも、それらの異なる響が互いに響き合って美しいスクールハーモニー、賢明らしさが生まれるのです。オーケストラの音がそれぞれに大切なように、一人一人、全ての人の命の響が賢明の校風を奏でるために掛け替えなく大切なのです。
生徒と教職員が互いに信頼し合いながら、それぞれの役割を担う伝統の校風、賢明スクールシンフォニーが、これまで以上に、一層、豊かな響きを奏でるよう、心より願っています。
古典音楽は美しく調和する協和音によって奏でられますが、近代、現代の音楽には、時に不協和音が用いられることもあります。不協和音とは、発せられた音がぶつかり合って歪み、不安定な響きを持つ和音のことです。不協和音は一見、落ち着かない、いびつな響きに聞こえますが、必ず協和音に移行して、結果的に調和の響を際立たせる効果があります。つまり互いにぶつかり合い、いびつな響きを発することによって生まれた不調和によって、今まで以上に美しい調和の響が生まれるのです。つまり、対立による不調和も、それを生かすことによってより素晴らしい調和が生まれるということです。
このことを学校生活に置き換えてみると、ぶつかり合って傷つくことがあっても、それは一過性のものであり、互いを受け入れるやわらかな心によって、より美しい調和の響き、賢明ハーモニーが生まれる、ということになります。
私たちは毎日、たくさんの人と関わりながら過ごしています。それぞれが、それぞれに異なる命のリズムやフレーズを奏でて生きているわけですから、時には、言葉がすれ違ったり、気持ちがぶつかったりして不協和音が生まれます。でも、そんな時こそ、自ら心の響に耳を傾け、相手の心に自分の心の響を重ねて、新たな調和の調べを見つけることが大切です。
「自分だけが正しい」と思って主張すると不協和音が起こり、全体の調和は失われてしまいます。けれど、相手の響を聴き、「この人はどんな響を奏でているのだろう」と心を傾け、自分の響きに重ねると、新たな調和が生まれるでしょう。そして、互いの心の響を合わせることによって不調和が解消し、調和が生れます。
「賢明」が美しいハーモニーを奏でるオーケストラであって欲しいと願っています。誰かの響きが少し弱っている時には、そっと寄り添う。誰かの響きが強すぎる時には、やさしく包み込むような響きを合わせる。注意深く心の響きを合わせて、皆で掛け替えなく美しい和音を奏でたいです。
ラフマニノフのコンチェルトは、最後にすべての楽器が一体となり、力強く、美しく、未来へ向かって、オーケストラ全員の響きが増幅し、壮大なクライマックスを迎えます。私たちも、一つひとつの和音を大切に積み重ねて、学校中に、世界に響き渡る調和のハーモニーを、未来に向かって発信し続けたいと願っています。
賢明祭が終わり一段落ですが、またいろいろな行事が続きますね。
あなたの心の響きが、誰かの心に優しく響き、豊かな心のハーモニーが生まれますように。